今日の絵本(2010年度)
「まあ、なんてこと!」 H23.2.18(金)
題 まあ、なんてこと!
作 ディビッド・スモール
訳 藤本朝巳
出版社 平凡社
メモ:海外の映画や音楽作品では、原題と日本題が全く違うことが多いですね。
音楽の世界では、日本題の可笑しさが話題になることも。 この絵本の原題は “Imogen’s Antlers”です。随分と直接的ですね。日本題「まあ、なんて「こと!」の方が素敵だなと思います。
可愛い女の子イモジェンが目を覚ますと、頭に鹿のツノが生えていました。洋服を着るのも、部屋から出るのも、階段を下りるのも、ツノが邪魔。家族はビックリ。でも本人はちょっぴり楽しい気分。大騒ぎの大人たちをよそに、いつも通りの生活をします。弟や二人のお手伝いさん達も、この事態を楽しんでいます。 忙しく一日が過ぎ、眠りにつく
イモジェン。そして朝起きると、ツノがすっきり無くなっています。家族はみんな大喜び。と思ったら、まあ、なんてこと!
子供は、絵本の絵を一瞬で読み取ります。ですから、表紙を見ると直ぐに、「あっ、ツノが生えてる!」、「その女の子・・・鹿なの?」と声があがります。そして、ドアを通るときにツノが引っ掛かると、「横向きになれば。」と教えてくれます。ページ数、内容のわりに文章が少ないのですが、絵との構成が良いので読みやすく分かりやすいです。
読み終わった後、「みんなも朝起きたらツノが生えていたらどうする?」と聞くと、「ノコギリで切ってもらう。」、「病院に行く。」、「もう1回寝る。」など面白い答えが返ってきました。「そう、でもカブト虫のツノだったら格好良くていいかもね。」というと、「バスに乗れないよ。」、「でも頭をこうやって下げれば乗れるよ。」、「僕は木にぶつけて、ツノを折っちゃうよ。」など、1冊の本から会話も弾みます。
「ぼく、仮面ライダーになる!」 H23.2.10(木)
題 ぼく、仮面ライダーになる
作・絵 のぶみ
出版社 講談社
メモ:前回のオーズ編の紹介を読んだお母さんが言っていました。「なんか人気みたいで、図書館ではずーっと貸出し中ですよ。」
どちらか1冊買うなら、オーズ編の方がお勧めです。
かんたろうは仮面ライダーが大好きな男の子。自分も仮面ライダーになりたくて、変身ベルトを作りしました。バイクも作りました。ポーズも決めました。でも、変身できません。幼稚園に行くと、ゴンちゃんが悪いことをしていました。勇気をふりしぼって、「ゴンちゃん僕があいてだ!」と言うと変身ベルトが光って、仮面ライダーに変身できました。すると、ゴンちゃんもクモ男に変身。この勝負どうなる?
前回紹介した「ぼく、仮面ライダーになる!オーズ編」を読むと、「もう1回読んで。」と必ずアンコールがかかります。そんな時に、この1冊。「え~!?もう一つあるの?」、「あっ仮面ライダー1号だ!」、「ちょっと待って、2号かも・・・。」と表紙を見ただけで歓声が上がります。今度はどんな話かとドキドキワクワク。女の子もオーズを見ている子が多いですね。男の兄弟がいなくても見るようです。「ちょっと怖いけど・・・カッコいいから見てる。」と女の子。怖いというのは怪人のこと。今も昔も仮面ライダーは子供達のヒーローです。
「ぼく、仮面ライダーになる!オーズ編」 H23.2.4(金)
題 ぼく、仮面ライダーになる!オーズ編
作・絵 のぶみ
出版社 講談社
メモ:以前ご紹介した「しんかんくん」シリーズの作者です。前作の「ぼく、仮面ライダーになる」も面白いです。
なんと、NHKおかあさんといっしょの「おしりふりふり」の作詞ものぶみさんだったんですね~。ユニークなアイディアが沢山詰まった方なんでしょうね。
かんたろうは仮面ライダーが大好きな男の子。遊びの邪魔ばかりする妹のことを「チェッ、妹なんていらないや。」と思ったら、本当に姿が見えなくなってしまいました。何とクモ男にさらわれてしまったのです。妹を助けようと、「仮面ライダーに変身だ!」とポーズをきめます。でも、変身できません。するとクモ男が言いました。「なんで変身できないかおしえてやろう。それは、本当は妹なんていらないと思っているからだ。」 さて、かんたろうは変身できるのかな? そして、妹を助けられるのかな?
今仮面ライダーオーズが大人気ですよね。映画も上映され、クリスマス時には変身ベルトなどのグッズが売り切れて、入荷未定状態になったとか。そこへ、まさにタイムリーなこの絵本。子供達も大興奮です。
「僕、仮面ライダーのベルト持ってるよ。」、
「あのね、冬休みにね、映画2回見た!」、
「オーズのメダル買うので、ヨドバシカメラに朝並んだんだよ~。大人も並んでたよ。みんな欲しいんだね。」と、会話もはずみます。
ちなみに、「タトバ・タトバ・タトバ」のキメ台詞はオーズになったつもりで格好良く言いましょう。そうでないと、「なんかちょっと違う。」と言われてしまいます・・・。
「すっとんだ ちょうべい」 H23.1.28(金)
題 すっとんだ ちょうべい
作 ひがしお あやこ
絵 梅田俊作
出版社 ひかりのくに
メモ:本を90度回転して持ち、縦にページをめくって読む本です。面白いですね。
絵の梅田俊作さんはあの「ラブ・ユー・フォーエバー」を描いた方です。絵の感じがそれとは全く違います。
爺さまと婆さまが大根の種をまくと、大きな大根になりました。いくら引っぱっても抜けないので、井戸掘りちょうべいにお願いして、大根を掘りだすことにしました。ちょうべいは穴をどんどん掘っていきましたが、なんと地獄まで落ちてしまったから大変。閻魔様に地上に戻る方法を教えてもらいましたが、間違えて今度は一気に雲の上まで跳んでしまった。そこには雷様が・・・。あ~、ちょうべいは無事に村へ帰れるのかな。
ことばのリズムがとても良いです。繰り返しことばと、擬音と台詞が絶妙に絡み合って、物語全体をメロディのようにして読み通すことができます。非常に良くできた絵本です。初めに大きな大根が出てくる場面では、「あっこれ、大きなかぶの話みたい。」と子ども達。しかしその予想を裏切って、地獄に落ちたり、雷様の太鼓打ちになったりの急展開にハラハラドキドキ。リズムが良いので、あっという間に最終頁へ。
「しろい うま」 H23.1.17(月)
題 しろい うま
作・絵 やなせ たかし
出版社 フレーベル館
メモ:アンパンマンのやなせたかしさんの絵本です。1976年の作品です。ぜひ手にとって見て下さい。35年前の作品とは思えない新鮮さ。あのアンパンマンを生んだ方は、何もかもが違うんですね。
僕の部屋に白い馬の絵がある。ある日、馬は絵からとび出した。僕は雪の原についた足跡を追って山へ。馬が走った跡は草も木も緑色になり、雪が融けて花が咲いた。花から蝶が生まれ、日が暮れると蝶が星になった。僕は星の線路を走る雲に乗って、空へ逃げた馬を追いかけた。馬に追いついた僕は馬の背に乗って家に帰った。馬はもとの絵の中に戻りました。少し疲れたようです。ところで、絵は元の絵と少し変わりました。どんな風に変わったのかな?
完璧なファンタジーです。白い馬を追いかけながらページをめくるたびに冬から春へ、夜から昼、夕暮れ、そして星空へと季節と時間が遷り変ります。なんとも鮮やか。
「初めの絵と何か違う?」と聞くと、「馬が嬉しそう!」、「少しつかれたようですって言ってたけど、疲れてないよね。元気だよ。」と馬の様子をまず挙げます。絵の背景の方が雪景色から春の原に大きく変わっていて目立つのに、馬の様子に注目しているのは面白いですね。 これは、子ども達が主人公に感情移入していたからではないでしょうか。みんなが白い馬を追いかける「僕」になっていたということです。
「ありがとう ターブゥ」 H23.1.11(火)
題 ありがとうターブゥ
作 わたなべ まりな
絵 おおつか けいり
出版社ソニーマガジンズ
メモ:作者はタレントの渡辺満里奈さん。「我が子に残してあげられる大切なものはなんだろう・・・それは言葉だ。」と考えて、絵本の構想が生まれたそうです。
本を読まずにコンサートに行きましたが、心から楽しめました。楽器の説明や体を動かす場面もあり、音楽に興味のある子もない子も楽しめます。
2月13日に横浜で同様のコンサートあり。お勧めですよ。
こぶたのターブゥはママからおつかいを頼まれました。「ルーサーおばさんにお鍋を返してきて。ありがとうって言うのを忘れないでね。」 ターブゥは忘れないように、「ありがとう」を繰り返しながら歩きますが、猫のコーネに驚かされて、何て言うか忘れてしまいます。思い出そうと考えながらルーサーおばさんの家に向かう途中、色々な友達と会ってお話をしながら物語は進行していきます。さあ、ターブゥは「ありがとう」って言えるのかな?
まだ子供達には読んでいません。実は私が作者の渡辺まりなさんに読み聞かせをしてもらいました。というのも昨年末クラシックのコンサートに行ったのですが、これが生の演奏にのせて作者が絵本の読み聞かせをするという企画。ソニーミュージックファウンデーション主催の「子供のためのコンサート」は、上の子がおなかの中にいるときから年に2回程行っているのですが、今回のような企画は初めて。25日のクリスマスに行ってきました。絵本の世界をしっかりと再現した演奏も素晴らしく、まりなさんの読み聞かせもしっとりと落ち着いていてとても上手でした。子供と一緒にすっかり感激して絵本とDVD(*)を買って帰ってきました。早く幼稚園でも読んであげたいです。
*コンサートと同じ楽曲で読み聞かせる「ムービーDVD絵本」
「ゆきむすめ」 H22.12.21(火)
題 ゆきむすめ
再話 内田莉莎子
絵 佐藤忠良
出版社 福音館書店
メモ:ロシアの民話です。表紙の感じは、同シリーズ「おおきなかぶ」で見覚えのある方もいるはず。佐藤さんの絵はロシア民話にしっくりくるんですよね。内田さんは、その「おおきなかぶ」をはじめ、ウクライナ民話「てぶくろ」など有名な絵本の再話・翻訳を多く手がけています。
「文化たより H22.12.16」も読んで下さい。
子供のいないお爺さんとお婆さんは、雪で女の子を作ることにしました。手や顔を作り、可愛らしい雪娘ができました。すると突然、雪でできた雪娘が歩き出したので、二人は大喜び。命の宿った雪娘は、美しく成長しました。しかし、春がきて夏がくると雪娘は元気がなくなりました。雪娘は、暑さが苦手なのです。そこへ友達が誘いにきて、雪娘を森に連れて行きます。そして焚火の跳び越えごっこを始めると、雪娘も一緒に跳ぶように勧めます。雪娘は思い切って火の上を跳びました。すると雪娘は・・・。
前回紹介した「さんねん峠」と同じく、この絵本も子供達に大人気です。(文化たよりH22.12.16) ただ面白い事は、さんねん峠は男の子に人気で、ゆきむすめは女の子に人気なことです。「どっちを先に読みたい?」と聞くと、大抵100%分かれます。でも、男の子も女の子もじーっと静かに聞いています。何とも切ないラスト。この切なさを十分に味わうようにじーっと聞いています。
「雪娘はどこに行ったのでしょう。どこにも姿が見えません。焚火の上に白いゆげが立ち昇っているばかりでした。ゆげは細い雲になって、他の雲を追いかけながら、上へ上へと昇っていきました。」と、静かに終わります。子供達は、「雪娘は空に帰って行ったんだよね。」、「無理して跳ばなければよかったのに・・・。」、「でも空からまた降ってくるんじゃない?」と余韻を味わいながら話していました。
「さんねん峠」 H22.12.17(金)
題 さんねん峠
作 李錦玉
絵 朴民宜
出版社 岩崎書店
メモ:先日韓国の方に、この絵本知っていますか?と訊ねたところ、「知っていますよ。」と言っていました。やっぱり本国でも有名なんだと、ちょっぴり嬉しくなりました。(実は、かなり嬉しかったです・・・)
朝鮮の民話はとても良い話が多いのですが、この絵本からは、作者が「いかに良いものを作ろうか」と練りに練っていることが伝わってきます。
さんねん峠には昔から言い伝えがあります。「さんねん峠で転ぶでない、さんねん峠で転んだならば、三年きりしか生きられぬ 長生きしたけりゃ転ぶ出ないぞ・・・」
ところがある日、お爺さんはさんねん峠で転んでしまい、その日から寝込んでしまいました。「わしは3年で死んでしまうのじゃ。」どんな薬を飲ませても、どんなお医者様にも治せません。そこへ水車屋の少年がやって来て、自分の言うとおりにすれば病気が治るというのです。さて、その方法とはなんでしょう。 病は気からということですが・・・。
文化たより(H22.12.16)でも紹介しましたが、このところ毎日読んでいる本です。これを読まないと子ども達が許してくれません。それもその筈、本当に面白いですよ。最近読んだ中では、ピカ一だと思います。
文章構成が抜群で、リズム良くグングンと読み進むので引き込まれるのでしょう。子供にも、いや子供だからこそ良い文章に反応するのでしょう。沢山絵本を読んでいると分かります。
語呂の良い文章が途中3箇所に出てきます。ここがまた読み手の腕の見せ所です。上手にリズムを意識して読みましょう。読み方次第で、2倍、3倍に楽しめる本です。
幼稚園の階段を上りながら、「さんねん峠で転ぶでない、さんねん峠で転んだらなば・・・」と、声を合わせて言っている子達がいました。思わず苦笑してしまいましたよ。
「めっきら もっきら どおんどん」 H22.9.21(火)
題 めっきらもっきらどおんどん
作 長谷川摂子
絵 降矢 奈々
出版社 福音館書店
メモ:降矢奈々さんは多数の作品を描いていますが、版画を勉強する為にスロバキヤ共和国に留学しているそうです。
暇をもてあましたかんたは、めちゃくちゃの歌を歌ってみた。「ちんぷくまんぷく・・・めっきらもっきらどおんどん」 すると強い風が吹き、体が深い穴の中へ・・・落ちる、落ちる・・・ついた所は夜の山。そこへ奇妙な3人の妖怪が現れた。一緒に遊ぼうと誘われて、空を飛んだりして楽しんだ。不思議な不思議な夜の世界。寂しくなったかんたは、あの言葉を言ってしまう。「それを言うな!」慌てる妖怪。あの言葉って・・・何? そして、かんたはどうなる?
不思議で何となく温かい感じのするお話です。物語の始まりは、緊張感が漂います。子供たちもこの先どうなるか、し~んとして聞いています。その緊張感を解き放つように、妖怪の登場はユーモラスに、明るく読むと盛り上がります。始まりから終わりまで、緩急をつけて、緊張と解放を繰り返した後にやってくる温かい叙情的なフィナーレは、心に沁みます。
「どすこい!むしずもう」 H22.9.14(火)
題 どすこい!むしずもう
作 タツトミ カオ
出版社 ひさかたチャイルド
メモ:子供たちがとても喜ぶこの絵本、現在店頭にも図書館にもありません。注文になりますが、在庫が少ないようです・・・お早めに。
今日は虫たちの相撲大会。カマキリのカマノ花、ダンゴ虫のダンゴ丸、カブトムシのカブト山、クワガタのクワノ里・・・みんな強そうです。それぞれ自分の武器をいかして戦います。優勝戦は大方の予想通り、クワノ里とカブト山の取り組みに。ツノとハサミのぶつかり合いの末勝負あり。優勝は○○○と思ったその時、なんとあの虫が飛び入り参加で挑戦・・・。 さて、優勝は誰の手に・・・。
カブトムシとクワガタの戦いを題材にした絵本は多いですが、これは虫たちの相撲大会。まわしを締めた虫力士と観客の虫たちがユーモラスに描かれています。読むときには、本物の相撲中継のようにして読むと楽しいです。呼び出しも調子を整えて、「ひが~し~、カマノ~は~な~」っていう具合に。この季節、色々な虫との触れ合いがあった子供たち。昆虫は小さなヒーローです。
「しんかんくんうちにくる」 H22.6.29(火)
題 しんかんくんうちにくる
作 のぶみ
出版社 あかね書房
メモ:しんかんくんは、最近シリーズ化されています。
人気があるんですね。
でも、初めに出版された「うちにくる」が一番面白いと思いますよ。
新幹線のしんかんくんは、かんたろうと大の仲良し。かんたろうは、休みの日にはしんかんくんに会いに駅に来てくれます。でも最近、かんたろうの姿が見えません。「どうしたんだろう?よし、かんたろうの家にいってみよう!」と決心しました。でも、しんかんくんが線路から抜け出すと町は大騒ぎになります。「なんでこんな所に新幹線がいるんだ?」しまいにはパトカーが来てお巡りさんに怒られる始末。その時、せんろくんが話しかけてきました。「かんたろうは、君に会いたくないのかも。」さて、しんかんくんは、かんたろうに無事会えるかな?
まず表紙を見せて、「これな~んだ?」と質問すると、「しんかんせん!」と元気に答えてくれました。そして、「新幹線のプラレール持ってる。」「ぼく、お婆ちゃんの家に行く時いつも乗ってる。」「新幹線は乗ったことないけどー、ロマンスカーならいつも乗ってる。」と発言が爆発的に起こります。この反応が楽しいんですよ。「みんな新幹線や電車が好きなんだね。どんなお話だか読んでみようね。」と言うと、しーんと静かになります。しんかんくんが街を歩く場面で、街は大騒ぎになりますが、聞いている子供たちも大騒ぎになりましたよ。読み終わった後、「みんなの家に新幹線が来たらどうする?」と聞くと、みんな本気で困ったような顔をしていました。「家が壊れちゃうから困る…。」って…かわいいですね…。
「コドリーロのおやつ」 H22.6.11 (金)
題 コドリーロのおやつ
作 ロベルト・アリアーガ
絵 ちば みなこ
訳 宇野和美
出版社 光村教育図書
メモ:表紙の絵が印象的で手にした、この絵本。
ちば みなこさんは、芸大大学院卒とのこと。世界的に活躍されているようです。さすがですね。作者はスペインの人です。2009年12月末にクリスマスプレゼントのように出版されました。
「おなかすいたよ!」わにの子コドリーロがいいました。でも、ママは川辺で卵につきっきり。コドリーロは自分でおやつを探しに行くことに。しばらく行くと、シマウマがいました。コドリーロは足にかみつきました。「いたい!おやつなら草があるだろ。」とシマウマに言われ、草を食べてみましたが…「うぇ、にがい!」…食べられません。象や猿にもかみついて、その度に怒られて。 さて、コリドーロはおやつを食べられるのでしょうか?
絵がとても素敵です。板か何かに描いているのでしょうか。絵の下地をブラシで塗っているようですが、はけの跡も効果的に、味のある温かい雰囲気を作り出しています。
ところで、子供達って絵をよく見ているんですよね。とても細かいところに気がつきます。最後のページには、物語に関係のない幾つかの「遊び」が描き込まれています。私も気がつかなかった事ですが、「赤ちゃんワニは、ちっちゃい魚を食べてるね。」、「コドリーロが魚にかまれて泣いてるよ。僕どうしてだか分かるよ。お母さんみたいに上手に食べられないからだよね。」など、絵をよく見て指摘するんです。まさに絵を読んでいるんですね。 年少さんから年長さんまで楽しめます。
「あなにおちたぞう」 H22.5.10(月)
題 あなにおちたぞう
作 てるむら てるお
絵 むらかみ つとむ
出版社 偕成社
メモ:寺村輝夫さん作で、「おしゃべりなたまごやき」は有名。
大きなゾウが大きな穴に落ちました。サルが来て、鼻を引っ張って助けようとしましたが無理でした。キツネが来て、カバが来て、サイが来て、みんなで引っ張りましたが助けられません。そこへハチが飛んできて、「穴に石を入れれば簡単に助けられるよ。」と教えてくれました。やっと穴から出られたと思ったら、なんと困ったことに・・・ゾウの鼻がね・・・。
トルストイの「大きなカブ」に似ているところもありますが、話の展開に変化があって本当に面白いです。「子供がどんなことに楽しみを感じ、興味を持つ」か、研究しつくして書かれた絵本だと思います。ですから、読み方しだいで子供の反応も大きく変わります。さらっと読んでは面白さは半減。サル、キツネ、カバ、サイと大きさにともなって声も低く変えていくと、この時点で子供たちは大喜び!引っ張られて伸びてしまったゾウの鼻は3ページにまたがって描かれているので、これをなぞりながら読むと皆大興奮! 読み終わったとき、「これっ、面白い。」と一人の年長さんが断言するように言っていたのが印象的でした。