今日の絵本(2011年度)
「やまのおふろやさん」 H24.3.5 (月)
題 やまのおふろやさん
作 とよた かずひこ
出版社 ひさかたチャイルド
メモ:おふろシリーズ第一弾。表紙は兎がお風呂に入っていますが、物語には登場しません。子供達はそれを見逃さないんです。「兎は出てこなかったね。」って。初めの表紙もよく見てるんですね。
しんしんしん、雪が降っています。雪山に沸いている小さなお風呂がありました。そこへお猿さん一家がやって来て、どぶーんと、とびこみます。あったかいな~。次にやって来たのは、いのしし一家です。どぶーんと、とびこみます。いいゆだな~。そして最後にやてきたのは、なんと雪だるま一家です。どぶーん、ぽこぽこぽこ・・・。えっ、雪だるま一家は大丈夫なの?
寒い日には温かいお風呂に入りたいですよね。雪山の露天風呂なんて最高ですね。動物達も温かいお風呂が大好きのようです。かわいいシンプルな絵に、シンプルなお話で、小さな子でも楽しめます。あっという間に読み終わるので、ちょっとした時間に読むにはもってこいです。そして、何といっても最後のどんでん返しには笑えます。子ども達も爆笑です。雪だるまが、まさかあんな事になるとはね・・・。知りたいって?それは、読んでからのお楽しみ!
(実際には、もう一回最後にどんでん返しがありますよ)
「のんちゃんと白鳥」 H24.3.1 (木)
題 のんちゃんと白鳥
作 石倉欣二(きんじ)
出版社 小峰書店
メモ:作者は東京芸術大学卒で、絵本の賞を沢山受賞しています。物語の舞台は宮城県北部の伊豆沼。実際に渡り鳥の聖域で、ラムサール条約に登録されています。2011年11月25日初版の新刊です。
びっくりした!ある日、父ちゃんが傷ついた白鳥を抱えてきた。そして、飛べるようになるまで家で飼うことになった。子どもだけど、でっかくて怖いんだ。でも、毎日餌をあげているうちに可愛くなってきた。名前はコオちゃん。毎年白鳥は、北の国からこの地にやってくる。どうして、コオちゃんは寒くなってから栗駒山を越えてやってきたのかな?コオちゃんとの楽しい日々は過ぎ、やがて沼へかえす時がきた。リヤカーにコオちゃんをのせて、仲間の白鳥がいる伊豆沼まで来た。いよいよお別れだ。元気でねコオちゃん。あっけないほどの別れの瞬間が逆に感動を増す。
良い話ですよ。少年の語り形式で書かれていますが、東方地方の方言が温かくて味わい深いです。東北の人になりきって、アクセントも真似して読んだ方が情感がでます。(読んでいるうちに、自分は東北出身じゃないかって思うほどにやって下さい。)
突然方言を使って話している先生に、子ども達は何の違和感も感じないようです。それは、子ども達が絵本の世界にぴったりとはまり込んでいるからです。その場がまるごと雪深い伊豆沼になったかのように。
「しずくのぼうけん」 H24.2.8 (水)
題 しずくのぼうけん
作 マリア・テルリコフスカ
絵 ボフダン・ブテンコ
訳 うちだ りさこ
出版社 福音館書店
メモ:幼稚園の先生達も、子供の時に「しずくのぼうけん」が好きだったそうです。
時代を超えて愛されている本です。1969年初版の超ロングセラー。
私は水のしずく。バケツから飛び出したしずくは、太陽に照りつけられて透明になって空へ昇っていく。黒雲に集まったしずく達は雨となって落ちていく。そして岩の割れ目にはまった。夜がきて、寒くて震えて、氷のかけらになった。やがてお日様やさしく照って、溶けたしずくは川を流れ流れて水道管へ。そして蛇口から出たと思ったら今度は洗濯機の中へ。グルグル目が回る。「助けて~!」
さて、しずくの冒険はいかに。
水のしずくが蒸発したり、雨になったり、凍ったり、川の流れから水道水になったり、また蒸発したり・・・と冒険をする話です。たたみかけるような文章が心地よく、絵もとっても素敵です。読み聞かせをすると、 「この本持ってる!」っていう子も多いです。人気があるのですね。
「これは環境科学絵本」なんていう大人の見方もあるようですが、実際の子供は理屈抜きに楽しんでいます。間違っても読んだ後に、水の変化について説明しないように。面白くなくなります。
「わんぱくだんのかくれんぼ」 H23.12.5 (月)
題 わんぱくだんのかくれんぼ
作 ゆきのきみこ・上野与志
絵 末崎茂樹
出版社 ひさかたチャイルド社メモ:1990年初版。このシリーズのエンディングパターン「夢だったのかな」、「夢じゃないよ」が、この作品では未だ登場していません。
けんと、ひろしと、くみ、三人揃ってわんぱくだん。今日は公園でかくれんぼ。でも、狭い公園では直ぐに見つかってしまいます。「もっと広い所でやりたいな。」、「昔、ここは大きな森だったんだって。」 すると、いつの間にか3人は深い森の中に・・・。そして、樫の木に話し掛けられます。「昔この森で、動物達がかくれんぼをしていたんじゃ。でも、鬼がどこかに行ってしまってな。みんな隠れたまんまなんじゃ。みんなで探してくれんか。」と、頼まれます。さて、わんぱくだんは動物達を見つけられるかな?
子ども達はわんぱくだんが大好き。「わんぱくだん読むよ。」と言うと、「わ~い」って歓声が上がるほど。森の中で隠れている動物達の姿は、隠し絵になっています。子ども達に一つずつ探してもらうと楽しいです。かなり盛り上がりますよ。2回、3回と読むと、どこに何がいるか覚えてしまっているのですが、それでも楽しいようです。予測できない楽しさと、予測できる楽しさ(確認の楽しみ)があるんですね。
「ミミちゃんのぬいぐるみ」 H23.11.7 (月)
題 ミミちゃんのぬいぐるみ
作 ふくざわ ゆみこ
出版社 福音館
うさぎのミミちゃんはお姉ちゃんが大切そうにしまった紙袋の中身が気になって仕方がありません。こっそり中を見ると、可愛い兎の縫いぐるみが入っていました。それを外に持ち出して遊んでいたら、縫いぐるみがボロボロになってしまって、さあ大変。それを見た友達のキツネやアヒルやロバ達が修理するのですが、出来上がると怪獣のようになってしまいました。どうしよう・・・、これじゃー・・・。でも、実はその縫いぐるみはね・・・。
絵本の表紙がまず可愛い。読み聞かせでは、先ず表紙から見せるので、表紙はとても大事です。そして、「みんな、縫いぐるみ持ってる?」、「どんな縫いぐるみが好きですか?」などと聞いて、話を膨らませてから読んでも良いですね。縫いぐるみを動物たちが修理する場面では、アヒルは口ばし、ロバはタテガミ、羊は角というように、それぞれ自分の特徴をくっつけていきます。その特徴を一つずつ確認するように読むと、先への期待感から、クスクスと笑いがこみ上げてきます。そして、「できた!」とヘンテコな縫いぐるみが見開き一杯に広がると、子ども達の笑いが爆発!こんな時は読み手も嬉しいですね。可愛さ、優しさと笑いが沢山つまった絵本です。ぜひ読んでみて下さい。
「ずーっと ずっと だいすきだよ」 H23.9.15 (木)
題 ずーっとずっとだいすきだよ
作 ハンス・ウィルヘルム
訳 久山太市
出版社 評論社
メモ:作者は、西ドイツ生まれ、現在米国在住です。
原題はI ‘ll Alway Love You
英語版を所蔵している図書館もあるので、ちょっと見てみるのも楽しいです。100%分からなくても、雰囲気で楽しめますよ。
エルフィーは僕の犬。僕達は一緒に大きくなった。エルフィーと僕は、毎日一緒に遊んだ。お兄さんと妹もエルフィーのことが大好きだった。好きなら好きと言ってやればいいのに、誰も言ってやらなかった。言わなくても分かると思ってたんだね。でも僕はいつも、大好きだよって言っていた。やがて時が経ち、エルフィーは歳をとって寝ていることが多くなった。そしてある朝、エルフィーが死んだ。みんな泣いた。僕も悲しかったけど、いくらか気持が楽だった。それはね・・・。
虫をつかまえたり、お祭りの金魚すくいで掬った金魚を飼ったりと、夏は生き物と触れ合う機会が多くなりますね。夏休み明けの子ども達は、そういった話を沢山してくれます。でも、どんなに可愛がっても、どんなに世話をしていても、いつかは訪れるペットとの別れ。犬や猫であれば、その悲しみはとても大きいでしょう。この絵本の「僕」は、エルフィーとの楽しかった生活と別れを通して、大切な事を教えてくれます。読むときには、少年の「僕」になりきると良いです。エルフィーが死ぬ場面では、少し声を震わせて読むと、子ども達の心にズンズン響いて感動が大きくなります。生き物を飼ったことがある子も無い子も皆、ここで同じ気持を経験できます。そしてエンディング、「ずーっと、ずっと、だいすきだよ。」って言いながら、子ども達一人ひとりの顔を見てあげると、とっても幸せそうな顔になりますよ。
「ぼく、あぶらぜみ」 H23.7.20 (水)
題 ぼく、あぶらぜみ
作 得田 之久
絵 たかはし きよし
出版社 福音館書店
メモ:セミはオスしか鳴きません。みなさんが聞いているセミの声はみなオスです。種類にもよりますが、土の中で5~7年を過ごし、地上に出て飛べるようになってから1~2週間で死んでしまいます。成虫は餌を食べないという説もありますが、針のように尖った口を幹にさして樹液を吸います。
木の皮の下に産み付けられたセミの卵から、翌夏に何かが這い出した。僕はあぶらぜみの幼虫だよ。僕は、地面に落ちると慌てて土の中に潜りこむ。そして木の根にとがった口をさして汁を吸うんだ。1年後、カブトムシや他の虫はみんな大人になるけど、僕はまだ土の中。5年目の夏の夜、ようやく土の中の生活が終わる。僕は土の中から這い出て木によじ登った。すると体の中がグルグルと動くような変な感じになってきた。気付くと僕には羽が生えていた。飛べた!そして大きな幹につかまって、メスに向かって「僕はここだよ」って歌ったよ。あぶらぜみの歌を。
せみの声が聞こえる頃に毎年読んでいます。先週せみの声がしたので(文化たより 7月14日) 、「よし、今だ。」と読みました。淡々と、せみの幼虫の「僕」になりきって読むと雰囲気が出て、子ども達も興味深そうに聞いてくれます。「今鳴いているセミは、みんなと同じ年。生まれてから5年とか6年、土の中にいるんだよ。」、「捕まえるのは楽しいけどね、その後は逃がしてあげるといいよね。1週間しか生きられないんだもんね。」、「今鳴いているセミが卵を産んで、その卵から大人になって鳴くころは、みんなは中学生や小学6年生だね。」などと言うと、不思議そうな、そして夢を見るような顔をして聞いていました。
「けんちゃんともぐりん」 H23.7.15 (金)
題 けんちゃんともぐりん
作 薄井 理子
絵 夏目 尚吾
出版社 くもん出版
メモ:作者はなんと小学1年生です。子ども創作コンクール最優秀作品に選ばれ、絵本化されました。弟とお風呂に入るときに、「一緒に潜ろう」って言うと、弟は「顔に水がかかるからやだ」と言って口までしかつからない。潜れるようになったらいいなと思って、この話を考えたそうです。モグラが土の中で潜るように、水の中で潜れたら楽しいなと思って水モグラのもぐりんにしたとか。本当に小学生が考えたとは思えないほどの傑作です。
けんちゃんはプールが大嫌い。お風呂で顔にお湯がかかるもの怖い。お婆ちゃんとお風呂に入っていると、お湯の中から小さなモグラが現れた。「僕は水モグラのもぐりん。」 もぐらのしっぽにつかまって、ブクブクブクとお風呂の中へ。夢中で泳いでいるといつの間にか海にでた。そしてもぐりんと一緒に海の中へ。魚や海ガメが泳ぎ方を教えてくれます。にじいろ貝を手に取ると、隙間から光がこぼれていた。中をのぞうこうと貝をあけようとしたら、「あけちゃだめ!」ともぐりんが叫んだ。貝の中からお婆ちゃんの声がして、気がつくとお風呂に戻っていた。でも、もぐりんは居なくなっていた。それからけんちゃんは、お風呂で毎日もぐりんを探している。 もちろん潜ってね
これは愉快!痛快!最高ですよ。そして、左のメモにあるように、作者は小学1年生です。信じられない!
水中メガネをかけた水モグラのもぐりんが可愛いです。物語の節目のところで、ここ一発に出るのがもぐりんの強烈なオナラ! 当然、子ども達も大喜びです。
魚の群れが「もっと足をバタバタさせて」とか、ウミガメが「もっと腕を回して」とアドバイスすると、どんどん泳げるようになっていくけんちゃん。そんなけんちゃんに自分を重ね合わせて、子ども達は笑ったり集中したり。本当に楽しそうです。
「みんなは、顔に水がつくと泣いちゃうかな?」と聞くと、「ぜんぜん、へいき!」、「お風呂だと嫌だけど、幼稚園の水遊びだと~、大丈夫。」などと、たくさん返事が返ってきます。みんなのお風呂にも、もぐりんが現れるかもよ。
「わんぱくだんのはらっぱジャングル」 H23.6.22 (水)
題 わんぱくだんのはらっぱジャングル
作 ゆきのゆみこ 上野与志
絵 末崎 茂樹
出版社 ひさかたチャイルド
メモ:以前紹介した「わんぱくだん」シリーズです。どの話も楽しく、子ども達も大好きです。ぜひ読んでみて下さい。
はらっぱで遊んでいたわんぱくだんの3人組。小川をぴょんと跳び越えたら、あら不思議。はらっぱではなく、ジャングルに入り込んでしまった。見上げるような大きな花に空飛ぶ絨毯のように大きな蝶が飛んでいる。でも、実は3人が小さくなってしまっていたのだ。そして、恐ろしいカマキリに襲われる3人。必死に逃げるが、目の前には川があって追い詰められる。さて、3人は元の世界に戻れるのかな?
「わんぱくだん」のシリーズは色々と読んでいるので、絵本を見せると直ぐに、「わんぱくだんだ!」、「それ楽しんだよね。」ってみんな大喜びです。カマキリに追われた3人は川に葉っぱを浮かべて逃げるのですが、安心したのも束の間。目の前に大きな滝が現れて、ドッパ~ン!と飛ばされてしまいます。気が付くと、そこは元のはらっぱ。小さなカマキリが小川の向こうでキョロキョロしているところで話は終わります。「カマキリが小さくて見えな~い、見たい見せて。」 と必ず言われるので、いつも席を回って見せてあげます。今日は、年中さんが新たな発見をしました。最後のページにはカマキリと小川が描かれていますが、小川の端に小さな葉っぱが流されていく様子が描かれていました。「これ、あの葉っぱだよね。」、「あっ本当だ。よく気付いたね。3人が乗っていた葉っぱだね。」とみんなにも紹介しました。
「あめふりくまのこ」 H23.6.10 (金)
題 あめふりくまのこ
詩 鶴見 正夫
絵 高見 八重子
出版社ひさかたチャイルド
メモ:教室から子ども達の歌声が聞こえてくる度に優しい気持ちになれる・・・そんな「あめふりくまのこ」が大好きです。童謡のCDに収録されていることが多いですが、意外と古い歌なんですよね。鶴見正夫さんは大正15年生まれ。作曲は湯山昭さんです。
中表紙には楽譜が載っています。
1.お山に雨がふりました。後から後から降って、きてちょろちょろ小川ができました。2.いたずら熊の子かけてきて、そうっとのぞいて見てました。魚がいるかと見てました。3.何にもいないと熊の子は、お水を一口飲みました。おててですくって飲みました。4.それでもどこかにいるようで、もいちどのじて見てました。魚をまちまち見てました。5.なかなか止まない雨でした。傘でもかぶっていましょうと、頭に葉っぱをのせました。
わかりましたか?これは、「あめふりくまのこ」の歌の世界を再現した絵本です。あの歌、本当にいいですよね。幼稚園では、年中さんがちょうどこの時期に歌っています。読む前に一度歌ってから、絵本を見せるのもよいですし、子どもと一緒に歌いながらページをめくるのも楽しいです。いろいろな読み方を試すとよいと思います。
小熊が雨の中を家に帰り、お母さんと対面しているところで絵本は終わります。歌には無い場面なので、絵のみの文字なしです。アドリブで、「おかえりなさい。まあ、すっかり濡れちゃって・・・さあ体を拭いて、ごはんにしましょうね。」と言って終わりにしました。その時の子ども達の顔と言ったら・・・とろけそうなほど、とろんと幸せそうな顔をしていました。大好きで優しいお母さんを思い浮かべているのかな。原作に言葉を加えない方がよいという考えもありますが、子ども達の反応をみると、成功だったかなと思いました。
「マリーナ」 H23.5.30 (月)
題 マリーナ
作 ルドウィッヒ・ベーメルマンス
訳 ふしみ みさを
出版社 クレヨンハウス
メモ:作者紹介によると、1898年オーストリアのチロル地方に生まれ、14歳で学校を中退。16歳で単身アメリカへ渡り、ホテルやレストランで働きながら絵を学んでいたそうです。アパートの日よけに故郷の景色を描いていたのが編集者の目にとまって、絵本をつくることになったとか。(1962年没)そんな劇的な人生とは思えないような、ほのぼのとした作品です。2009年に初翻訳されて出版されたビンテージ絵本。
アシカのマリーナの父さんはサーカスの人気者。車を運転して海に家族旅行に出かけた。沖で泳いでいるイルカたちを見て、「のんきなイルカたちだ。遊んでばかりでお気楽だね。」と父さんはぶつくさ言っています。 ところが、小さなマリーナがサメに飲まれてしまって、さあ大変!
クジラやトドに助けを求めますが、頼りにならず・・・。
それを見ていたイルカたちが、「僕らでマリーナを助けよう!」と作戦会議。力を合わせて、サメを海から放り出すことに。これに驚いたサメは、口からマリーナをスポーンと吐き出します。急いで病院へ運ばれたマリーナは、手術を受けて助かりました。そしてお父さんは気がつきます。
「困ったときに助けてくれるのは・・・。」
アシカの家族が車で旅行に行く場面が何ともユーモラスで可愛い。ここで、子ども達のハートをつかんでおいて、場面はマリーナがサメに飲み込まれて急展開。イルカがサメを海から放り投げる場面では、あるテクニックを使うと盛り上がりますよ。イルカがサメを放り投げるのに合わせて絵本を上下左右に大きく動かし、本当にサメが動いているように見せるのです。内容に合わせて動かすのがポイントですが、動かしすぎると何だかよく分からなくなるので注意。絵本は読み手の読み方や工夫次第で何倍にも楽しめるものです。子ども達の「楽しかった!」の声が、次の絵本読みの原動力となります。明日は何を読もうかな。
「ブルンミとななつのふうせん」 H23.5.24 (火)
題 ブルンミとななつのふうせん
作 マレーク・ベロニカ
訳 羽仁協子
出版社 風濤社
メモ:前回「ラチとらいおん」を紹介したところ、「早速買いました」という方がいました。「マレークさんの絵本で他にお薦めは?」と聞かれたので、迷わずこの本を薦めました。マレークさんの作品は沢山あるので、知らない本も多いのですが、今まで読んだ中では一番だと思います。夜寝る前に読んであげるなら、「おやすみアンニパンニ」も良いですよ。
くまのブルンニは、アンニパンニに綺麗な風船をもらいました。赤、橙、黄、緑、空色、青、紫色の7つの風船です。そして友達に見せようと出掛けました。ところが、柵に引っ掛かって一つ割れてしまいました。でも、「まだ沢山あるから平気さ」とブルンミは思いました。でも、行く先々で次々に風船が割れてしまいます。最後に残った赤い風船・・・これもうさぎが欲しがったので、あげてしまいます。しょんぼりのブンルンミにアンニパンニは言います。「風船はいつかなくなってしまうものよ。」 そんなブルンミに素敵なハッピーエンドが。なくした風船と同じ、七色の虹が空にかかっているのを見つけて、「そうか、今日は素晴らしい日だったんだね!」
絵がとっても可愛いです。登場するキャラクター、色使い、どれをとっても最高です。ストーリーも分かりやすく、入園前の小さな子でも楽しめますが、実は読めば読むほどに奥が深い作品なのです。大人が読んでも、ハッとする場面が何回も出てきます。
今日読んだ後に、「みんな虹を見たことあるかな?」ときいてみました。「ある」という子に、「ない」という子も。「お父さんが車を洗っているときに、お水のシャワーで見えた。」っていう子もいました。「雨が上がってお日様が出たら、空を見てごらん。虹が見えるかもしれないよ。」と言うと、「見たいな~」と子ども達。お父さんお母さん、是非見せてあげてください。
「ラチとらいおん」 H23.5.6 (金)
題 ラチとらいおん
作 マレーク・ベロニカ
訳 とくながやすとも
出版社 福音館書店
メモ:ハンガリーの作品です。1965年が日本版の初版なので、絵本の殿堂入りでしょうか。作者の作品には、ブルンニとアンニパンニのシリーズ等、良いものが沢山あるので是非読んでみて下さい。もう卒園しましたが、お父さんがハンガリー人の方がいました。netでハンガリー語の挨拶を調べては、いつも挨拶していたんですけど、お元気かな。また発音教えて欲しいです。
Hogy van?(お元気ですか)
あのお父さんも子供の頃、ハンガリーで読んでいたかな。
ラチは弱虫な男の子。犬も怖いし、暗い部屋も怖い。そんなラチはいつも仲間ハズレ。だからラチは家で絵本ばかり読んでいます。ある朝、部屋に小さな赤いライオンが現れた。ラチは強くなるための特訓を毎日ライオンに受けます。ライオンの存在を頼りに、自分の弱さに打ち勝っていくラチ。
「僕にはライオンがいる」 そして、意地悪な子ノッポをやっつけます。友達は大喜び。ラチがポケットに入っているはずのライオンを出そうとすると、そこには・・・。
大抵の子どもは、暗い部屋が怖いし、大きな犬もやはり怖い。主人公ラチに自分を重ね合わせているのではないでしょうか。とっても真剣に聞いています。 まさか「僕、暗い部屋が怖い・・・。」なんて、間違っても言えませんがね。そして、ラチが強く成長していく姿に共感しているようです。
なぜか居なくなってしまったライオン。ラチの家にはライオンからの手紙がありました。「君は、ライオンと同じくらい強くなったね。もう僕が居なくても大丈夫だよ。僕はこれから弱虫の子供の所へ行って、強くしてやらなくちゃならないんだ。僕をいつまでも忘れないで。僕も君のことは忘れないよ。じゃ、さよなら。」 楽しいお話も、最後はじ~んと胸に響きます。 いつも元気の良い年中の男の子が、神妙な顔で「何だか、感動した。」と言いました。 「手紙のところで、 ここのところが、なんていうか、モワモワしたっていうか…」と、胸をさすっていました。
みんなの心の中にも、ちいさなライオンがいるんだよ。
「おすわりくまちゃん」 H23.4.25 (月)
題 おすわりくまちゃん
作 シャーリー・パレントー
絵 デイヴィッド・ウォーカー
訳 福本友美子
出版社 岩崎書店
メモ:アメリカの作家。孫が書店の遊び場で、小さい椅子にクマの縫いぐるみを一つずつのせているのを見て、絵本のアイディが生まれたそうです。そう言えばアメリカでは、書店の中にカフェがあって、売り物の本を飲食しながら読める店が多いです。なんて太っ腹なんだろうと思うけど、必要ない本まで買ってしまい、結局読まずに本棚の肥やしに。これもお店の戦略でしょうか…。
小さなイスが4つ並んでいます。そこへ小さなクマちゃん達が座りました。クマちゃんとイスの数はピッタリ同じ。そこへ、大きな体のちゃいくまちゃんが来ました。僕のイスがないよ・・・。 色々工夫して座ろうとしますが、大きなちゃいくまちゃんは座れません。さてさて、ちいさなクマちゃん達は、どうするのかな?
可愛い絵本を選ぶなら・・・私が知っているなかでは、No.1かもしれません。だから、新入園の小さな子達が入ったこの時期に読みました。狙いは的中!年少さん達もみんな釘付け。かわいい!登場するくまちゃん達は、水玉模様の「ぽちぽちくまちゃん」、ピンクの「ふわふわくまちゃん」、「きいろいくまちゃん」、「ぷよぷよくまちゃん」・・・縫いぐるみのような柔らかさが伝わってきます。もちろん、小学生でも大人でも楽しめます。
年長さんが言いました。「小さなイスは、ちゃいくまちゃんには小さいよ。座ったらこわれちゃう。」、「順番にこうたいで座ればいいよ。」、「下に座ってもいいよって言うクマがいたら、かわってもらえばいい。」・・・ですって。でも一番多かった声は、「もう一つイスを持って来ればいいのに~。」です。確かに、それはそうなんですけど・・・。こんなふうに反応よく、自分ならこうするって、パッと言ってくるんです。絵本の世界に自分を置いているからなんですよね。