今日の絵本(2008年度)
「ポカポカホテル」 H21.3.6(金)
題 ポカポカホテル
作 松岡 節
絵 いもと ようこ
出版社 ひかりのくに
たっちゃんがお留守番をしていると、庭をきつねが走っていきました。たっちゃんちのスリッパを片方くわえています。大変、追いかけなきゃ!きつねを追いかけていくと、不思議なことに雪の降る雑木林に出ました。リスの道案内で、真っ暗なトンネルの中へ。ドキドキしながらトンネルを抜けると、その先には動物たちが冬ごもりをするポカポカホテルが…。お母さんが帰って来て、目が覚めて?お母さんの足元をみると片方のスリッパがありません。やっぱり・・・。 これは夢?それとも本当のこと?
この絵本はまさにファンタジーです。子供達の表情をみていると、ファンタジーの世界に入り込んでいるのがよくわかります。何も見えないトンネルの中でのリスとたっちゃんとのかけ合いは、ドキドキしながらも笑い声が。お母さんが片方のスリッパしか履いていない場面では、「やっぱり夢じゃなくて、本当だったんだ・・・。」と不思議な気持ちになったようでした。
「はたらきもののトラック、キング」 H21.2.26(木)
題 はたらきもののトラック、キング
作・絵 松本 州平
出版社 徳間書店
小さなトラックのキングは、みんなの人気者。ある日、オオクマダケに住むクロクマくんのところに荷物を届けることになりました。ところが、オオクマダケに行くまでには、大きなトラックとぶつかりそうになったり、道に迷いそうになったり、つり橋が落ちていて渡れなかったりと、ハプニングの連続。やっと着いたと思ったら、クロクマくんの様子が何か変です。さて、どうしたのでしょうか・・・。
この絵本を読むと必ず、「もう一回読んで!」とか、「明日も読んでね。」と声が掛かります。子供たちはこの絵本が大好きなんです。話が次から次へと展開していく、ハラハラドキドキの冒険物語が子供達の心をつかむようです。「次はどうなるんだろう?」って、ページをめくるときにときめきがあるんでしょうね。絵もとても綺麗で、絶対に間違いのない一冊です。
「手ぶくろを買いに」 H21.2.2(月)
題 手ぶくろを買いに
作 新美南吉
絵 黒井 健
出版社 偕成者
メモ:新美南吉のもう一つの代表作「ごんぎつね」は、教科書にも採用され、あまりにも有名。
寒い冬、母さん狐は、子狐の為に街で手袋を買うことにしました。子狐の片手を人間の手にかえて、その手にお金を持たせます。人間に対して、悪い思い出がある母狐はどうしても街に入ることができません。一人で街に行く事になった子狐は、お店で手袋を買うときに狐の手のほうでお金を渡してしまいます。さて、子狐は無事に手袋を買って帰れるのでしょうか。
やや古い文体で書かれていますが、それが物語りに奥行きを与えています。子供たちに読み聞かせるときも、補足を加えずにそのまま読みました。余計な言葉を加えて説明するよりも、新美南吉の世界を直接味わって欲しかったからです。絵の美しさも重なって、子供達は、物語の中にどっぷりと浸っていました。子狐は言います。「人間ってちっとも怖かないや。間違えて本当のお手々出しちゃったの。でも摑まえやしなかったもの。ちゃんとこんないい暖かい手袋くれたもの。」それを聞いて母狐は、「本当に人間はいいものかしら。」と2度つぶやいて物語りは終わります。この母狐の言葉とともに本を閉じると、暖かな手袋につつまれたような柔らかくて暖かい気持ちが子供達にジワーっとひろがっていくのと同時に、何か不思議な感覚にとらわれた様子でした。この”不思議な感じ”を感じる事が、情緒を育むために大切だと思います。
「しろいうさぎとくろいうさぎ」 H21.1.14(水)
題 しろいうさぎとくろいうさぎ
作 ガース・ウィリアムズ
出版社 福音館書店
メモ:アメリカの絵本で原題はThe Rabbits’ Wedding。
仲良しの白いウサギと黒いウサギはいつも一緒。朝一緒に起きて、広い野原で一緒に遊んで、一緒に水を飲んで・・・。ある日、いつものように遊んでいると、黒いウサギが悲しそうな顔をして考え込んでしまいます。白いウサギが「どうしたの?」ときくと、黒いウサギは願いごとをしていたんだと答えます。 その願いごととは・・・? そして、それは叶うのでしょうか・・・。
黒いウサギが悲しそうな顔をして考え込んでいる時に、子供たちも「どうしたんだろう。」と、本当に心配そうな顔をしていました。奥が深い話で、大人と子供では受け取り方が違います。(話の背景には、ある社会問題があるとされています) それでも、読み終えると、「願い事は、口に出して言わないとだめだよね。」、「そうだよ、思っているだけじゃ分からないよ。」と子供達。何か大人の意見を聞いたようでした。ハッピーエンドなのですが、ハッピーエンドの中にも何かわりきれないものがあるような・・・。子供なりに、何か不思議な感じがしたようです。
「ちいさなちいさなすてきなおうち」 H20.11.11(火)
題 ちいさなちいさなすてきなおうち
作 さかい さちえ
出版社 教育画劇
メモ:2008年3月3日初版です。本屋で平積みされていて手に取りました。子供のみならず、大人でも夢のようなおうちに引き込まれます。絵を見るだけでも楽しいので、就園前のお子さんにもお勧めです。
かわいいポコポコが、月曜日から金曜日までお友達の家に遊びに行きます。ねずみのかぼちゃの家やくまさんのお菓子の家、へびさんのランプの家。どれもとても可愛い家です。土曜日にポコポコちゃんは、みんなから貰ったお土産で何かの準備をしています。何が始まるのかな?
ページをめくるたびに素敵な世界が広がります。まずは可愛い家の外観を充分に楽しんで、次のページをめくると家の断面が登場します。ここでも誰が何をしているか充分に時間をとって楽しませてあげます。
読み終えてから、「みんなならどんな家に住みたい?」と尋ねました。「お菓子の家!」という答えが多かったのですが、「カブトムシの家!樹液がいっぱいで美味しそう。」や「ピザの家。チーズの上で遊びたい!」というユニークなもの。「海の家、でも溺れそう・・・。」、そして中には「自分のおうちがいい。」とポツリと言った年少さんもいました。確かに、自分の家が一番ですよね。
「ピーのおはなし」 H20.11.6(木)
題 ピーのおはなし
作 きもと ももこ
出版社 福音館書店
メモ:マスコミで話題になった「うずらちゃんのかくれんぼ」の作者 きもと ももこさんの2作目の作品です。
犬のピーは、おなかに赤ちゃんがいるお母さんの為にイチゴをとりに出掛けます。ところが途中で川に落ちて、さー大変。それでも、魚に助けられたり、鳥に助けられたりしながら、美味しいイチゴを沢山とることができました。家に帰ると、お母さんからも素敵なプレゼントが。ピーは大喜び。みんなでイチゴのパーティをしました。
絵がとても可愛くて、色使いも綺麗な絵本です。ピーの冒険に子供たちは釘付け。途中で、「あれっ?うずらちゃんとひよこちゃんがいる!」と気づいた子がいました。(左メモ参照) それから、ピーが川に落ちた風景が、次のページで川に流されたピーのはるか後方に小さく描かれているのも見逃さず、「後ろの方の小さいお花が、さっきのお花だよ。」と教えてくれました。驚きの観察力。まさに絵を読んでいるんだなと感心しました。
「おむすびころりん」 H20.10.6(月)
題 おむすびころりん
作 松谷みよこ
絵 宮本忠夫
出版 にっけん教育出版社
おじいさんが、おむすびをたべようとすると、コロコロと転がって穴の中へ落ちてしまった。すると穴の中から可愛い歌声が・・・誰もが知っている昔話です。沢山の本が出版されていますが、本によって内容は少しづつ違います。この本を紹介したのは、話の展開と文章の面白さ、リズム感、ユーモラスで綺麗な色調の絵と構成、全てにおいて優れているからです。お手頃な価格の本も多くありますが、是非見て頂きたいと思います。違いが分かります。
1年を通して何回か読みますが、何度読んでも新鮮で楽しそうな反応があります。特に、ねずみの唄を可愛い声でリズミカルに歌うと大変盛り上がります。今日も大いに盛り上がりました。メロディーはアドリブでどうぞ。
「ぼくがパジャマにきがえていると」 H20.9.29(月)
題 ぼくがパジャマにきがえていると
作・絵 にしかわ おさむ
出版社 PHP研究所
メモ:先日(9月9日)、「おじいさんと10匹のおばけ」を紹介したところ、「にしかわさんの絵本で、他にお勧めは?」と尋ねられたので、この絵本を選びました。楽しいですよ。
ぼくが、夜パジャマにきがえていると、窓からゴリラがのぞいていた。次の日も、その次の日ものぞいているよ。でも、このゴリラ、僕と一緒に寝たかっただけなんだって。ベッドで一緒に寝たら嬉しそうに帰っていったよ。そうしたら、今度は子供のオバケが窓からのぞいていたんだ。小さくて可愛かったから、一緒に遊んだんだ。するとそこへ、オバケのお父さんもやってきて・・・。
年少さんから年長さんまで楽しめるお話です。ゴリラが窓からのぞいているという現実には起こりそうもない、でもひょっとすると自分の身にも起こるかもしれない??話の始まりに、子供たちの心は釘付けになります。そして、かわいいオバケと空をとんだりと、始まりから終わりまで、この先どうなるんだろうと、目を輝かせながらきいてくれました。お話の後、「でも、ゴリラとかオバケって、窓からのぞかないよね。」と友達同士で確認しあっていたのが、とても可愛らしかったです。読むたびに「もう1回読んで」とリクエストされる絵本です。
「かえるのじいさま と あめんぼおはな」 H20.9.18(木)
題 かえるのじいさまとあめんぼおはな
作 深山さくら
絵 松成真理子
出版社 教育画劇
メモ:6月に出版されたばかりの新刊絵本です。あまり本屋に並んでいるのを見ないのですが、間違いなく名作だと思います。
あめんぼ夫婦を食べたかえるのじいさまに、あめんぼ夫婦の娘おはなが会いに来ます。そして、「おとうさん、おかあさんに会わせて下さい、口の中をみせて下さい」と泣きながら頼むのです。仕方なく口を開けたじいさま、口の中を覗き込むおはな。たらたらとよだれが出てくる。口が閉じそうになるのを必死にこらえるじいさま。そんな緊張感のなか、物語は美しいエンディングを迎えます。
全編に流れる日本的で民話的な情緒と、食べるものと食べられるものとの間の緊張感、その奥に潜む優しさが見事に表現されています。年長さんに読みましたが、物語の奥深さを十分に味わっているようでした。
ゆっくりと、静かに読むと、子供たちもまるで行間を読んでいるかのように集中して聞いてくれます。じいさまがおはなに口を開けてみせる場面では、子供たちも口をあけて緊張した雰囲気でした。エンディングでは、余韻を充分に味わっていた子供たち。「何だか胸がじーんとした」そうです。
「おじいさんと10ぴきのおばけ」 H20.9.9(火)
題 おじいさんと10ぴきのおばけ
作・絵 にしかわ おさむ
出版社 ひかりのくに
メモ:にしかわさんの作品は、可愛くてユーモラスなオバケの話が多いのですが、どれも面白いですよ。
ある日、おじいさんのところにプレゼントが届きました。中にはなんと10匹のおばけが・・・。でも、このおばけ達、とってもかわいいんです。掃除をしたり、料理を作ったり、おじいさんともすっかり仲良くなりました。ある晩、おじいさんが熱をだして寝込んでしまいました。「おじいさんが死んじゃうよ~。」 さあて、おばけ達はどうするのかな・・・。
読む前に、「おばけの話だけど、みんな泣いちゃうかな?大丈夫かな?」と、前ふりをするのがポイントです。「こわくないよ!」と言ったものの身構える子供たち。でも、かわいいお化けの登場に、緊張感から一気に楽しい気分になって盛り上がること間違いなしです。
10匹のおばけが、絵の中で、それぞれ色々なことをしているので、「このおばけは、窓を拭いているね。」などと一言入れると、あとは子供たちの方から色々な発言をしてくれますよ。
「カブトくん」 H20.7.22(火)
題 カブトくん
作・絵 タダ サトシ
出版社 こぐま社
メモ:作者のタダさんも、子供の頃から昆虫が好きで飼ったり絵を描いたりしていたそうです。
虫が大好きな男の子、こんちゃんは大きなカブト虫の幼虫を見つけます。大きな幼虫は、こんちゃんと同じ背丈の大きなカブト虫になりました。こんちゃんは、カブトくんと名前をつけて、一緒にお風呂に入ったり、公園で遊んだり・・・。でも、カブトくんは、だんだん元気がなくなってきました。心配したこんちゃんは、カブトくんを森にかえすことに。
子供は誰でも、こんな経験を夢みているんだと思います。カブト虫とこんちゃんの交流に心を躍らせ、完全に物語の中に入り込んで楽しんでくれます。まさにファンタジーですね。今日は年長さんに読みましたが、いつ読んでも、「もう一回読んで」とアンコールが止まない本です。また、ちょうど教室にカブト虫がいたので盛り上がり方も格別でした。みんなの家にも、カブトくんが来るといいね。
「かえるさんのおいけ」 H20.7.18(金)
題 かえるさんのおいけ
作・絵 なかの ひろたか
出版社 教育画劇
メモ:6月に出版されたばかりの新刊です。とてもかわいい絵本で、お勧めです。
池の水が少なくなって、かえるさんが困っています。そこで、まりこちゃんはバケツに水をくんで池に運びます。水を入れると、池は少し大きくなりましたが、そこへカメさんがやってきて、池に入ります。すると、また水が足りなくなってしまいました。まりこちゃんは、水をくんで運びます。そこへ、あひるや熊の親子が次から次へとやって来て…
今日は、年少さんに読みました。シンプルな内容で、子供たちが大好きな「繰り返し」のお話なので、「わー」っと声を出して喜んでくれます。ちょうど今、幼稚園でも水遊びで盛り上がっているので、「私も池に入りたーい!」なんて言っている子もいました。ちなみに、年長さんに読むと、「まりこちゃんは、重い水を何回も運んで可哀そうだ。」とか、「子熊だけなら入っても水は飛び出ないと思うよ。」なんて声も聞こえてきます。
「ねずみのかいすいよく」 H20.7.14(月)
題 ねずみのかいすいよく
作 山下明生
絵 いわむら かずお
出版社 ひさかたチャイルド
可愛いねずみの家族が海水浴に行きます。おとうさんねずみは、子供たちが迷子になったり、事故にあわないように小さな浮き輪を作ります。浜辺でたくさん遊んだ後、お昼寝をしていると、いつの間にか潮が満ちてきて、お父さんが離れ小島に取り残されてしまいました。さて、子ねずみ達はどうするのでしょうか。
今日は、年中さんに読みました。季節がら、海に行った子も多く、自分のことのように物語に引き込まれていました。お父さんが、海の小島に取り残されたときには、ハラハラドキドキ心配そうな顔をしていましたが、子ねずみ達の活躍で、お父さんが助かるとニコニコ顔に。読んだ後は、海の話や夏休みの話で盛り上がりました。
「ないた赤おに」 H20.7.8(火)
題 泣いた赤おに
作 浜田廣介
絵 いもとようこ
出版社 金の星社
(以前は、白泉社から出版されていましたが、現在は金の星社から出版されています。実際に幼稚園で読んだのは、白泉社のものですが、表紙・内容ともに現在の金の星社版と同じものです。)
人間と仲良くしたい心のやさしい赤鬼。でも、村人は赤鬼を恐れ、受け入れようとはしません。そこで青鬼は、ある秘密の提案をします。青鬼の言ったとおりにすると、村人は赤鬼を信用して仲良くしてくれました。一方、しばらく姿を見せない青鬼の事が気になり、青鬼の家を訪ねてみると・・・。
じっくりと浜田廣介の世界を味わって欲しかったので、年長さんに読みました。はじめは、「鬼なんて怖くないよ」等と言って、はしゃいでいましたが、物語が進むうちにグングンと引き込まれていきました。物音ひとつたてず、緊張感さえ漂っていました。そして、最後の「ドコマデモ キミノトモダチ アオオニ」の言葉で、子供たちの張りつめた心に、ジワーっと熱いものが広がっていくのが分かりました。余韻に浸りながら、涙を流している子もいて、作者の伝えたかったものは、確かに5歳の子供たちにも届いたようです。本当に、素晴らしい絵本だと思います。
メモ;この絵本は、偕成社からも出版されていますが、偕成社の方は、より易しく 短く書かれています。今回は、年長児向けに白泉社版(原文です)を読みました。年中児には、偕成社の方がよいかもしれません。
「ちいさなこぐまの ちいさなボート」 H20.7.3(木)
題 ちいさなこぐまのちいさなボート
作 イヴ・バンティング
絵 ナンシー・カーペンター
出版社 主婦の友社
小さなこぐまが、大切にしていた小さなボート。いつでもボートで遊んでいます。でも、こぐまは大きくなって、ボートに乗れなくなってしまいます。誰も乗らなかったら、ボートも寂しいだろうと、この小さなボートを好きになってくれる小さなクマを探しに行くのですが・・・。
「ちいさな」と「おおきな」という言葉が、リズムよく繰り返されるので、子供たちも喜びます。また、大きさについて関心を持ってくれます。そして、「私も弟にご本あげたよ。」「僕も家の隣の赤ちゃんに、オモチャあげた!」など、自分の経験と重ね合わせる子もいました。
あまり知られていませんが、とっても素敵な絵本です。絵も可愛くて、色調もとても柔らかで、子供たちは勿論のこと、読んでいる方も優しい気持ちになれる一冊です。